満月の夜の息抜き

誰かに話す必要がないことたち。

五月の生暖かい夜

連れが入院している日医付属病院を出た帰り、千駄木駅まで歩いた。

 

スマホで検索すると、根津駅より近いというのでそちらに向かったけれど、全く遠かった。今日はまだ五月というのに、夏のように暑い日だった。この時間になったら少し暑さは和らいで、でも本当に真夏の夜のようになっていた。これから六月にまた寒くなるのはかなわないなと思った。

 

千駄木の駅に向かうとき、たくさんの人とすれ違った。仕事を終えてようやく帰宅する人たちだろう。足早にそれでいてみんななんとなく安らかな顔をしている。反対にこんな時間に駅へ行く人は少なかった。

 

予想外に長い時間病棟で待たされ、仕事を一日空いたスペースでやっていたので疲れた。家に帰る前に少しだけ休みたかった。駅前には、チョコクロワッサンが名物のカフェとドーナツ屋のチェーン店が立っている。ドーナツ屋で甘いものを食べようとおもったけれど、ドーナツを棚から選ぶのがおっくうに思えたのでカフェに入った。

 

中ではアルバイトの店員が優しい雰囲氣で働いていた。お店の中は暗くてせまかった。いろいろな人たちがダラダラとおしゃべりをして過ごしている。仲の良さそうなふくよかで若い2人の女の子がクスクスと揺れながら笑っていた。

 

たまたま空いていた一番隅の席に座れた。アイスコーヒーとチョコクロワッサンを食べたがなんの味もしなかった。隣の席にいた男性はパソコンを開いてなにか作業をしているようだったが、画面をちらりと見たら、なにもしていなかった。その隣では若い女性が外国人の男性から英会話のレッスンを受けている。

 

スマホで会社のチャットのようなアプリを立ち上げて、いま返事をする必要のあるメンションがないことを確認したあと、そそくさとお店を出た。千駄木の駅で代々木上原行きの電車に乗った。

 

うちに帰れば義母が夕飯を用意してくれているが、あまりうれしくなかった。はやく普段の生活に戻るといいなと思う。